椅子から立ち上がりにくい原因と家でできる練習🌟リハブログ⑤
椅子から立ち上がりにくい原因と家でできる練習

椅子からの立ち上がりは、日常生活に欠かせない大切な動作です。
イラスト:いらすとや
「椅子から立つときに時間がかかる」
「立ち上がるときに手すりや机を強く押している」
「立ったあとにふらつく」
「トイレや食卓の椅子から立つのが大変になってきた」
このようなお悩みはありませんか?
椅子から立ち上がる動作は、日常生活の中で何度も行う大切な動きです。
食事、トイレ、着替え、外出など、さまざまな生活場面につながっています。
立ち上がりにくさは、単に足の筋力が落ちたから起こるとは限りません。
膝や腰の痛み、股関節や足首の硬さ、バランスの低下、椅子の高さ、足の位置など、いくつかの要因が関係していることがあります。
今回は、理学療法士の視点から、椅子から立ち上がりにくい原因と、ご自宅で確認しやすいポイントについてお伝えします。
立ち上がりは「足の力」だけで決まるわけではありません
椅子から立ち上がるとき、多くの方が「足の筋力が弱くなったから」と考えます。
もちろん、太ももやお尻の筋力はとても大切です。
しかし、立ち上がり動作には、筋力以外にもさまざまな要素が関係しています。
たとえば、身体を前に倒せているか。
足の位置が安定しているか。
膝や股関節がしっかり曲がるか。
立ったあとにバランスを保てるか。
椅子の高さが低すぎないか。
このように、立ち上がりは「筋力」「関節の動き」「姿勢」「バランス」「環境」が組み合わさって行われる動作です。
そのため、ただ筋力をつけるだけでなく、立ち上がるときの身体の使い方も確認することが大切です。

足の位置や姿勢は、立ち上がりやすさに関係します。
イラスト:いらすとや
原因1:足の位置が安定していない
立ち上がるときに、足の位置が前に出すぎていると、身体をうまく持ち上げにくくなります。
また、足が床にしっかりついていない状態では、力を入れにくくなり、立ち上がるときにふらつきやすくなります。
立ち上がる前には、次のような点を確認してみましょう。
「両足が床についているか」
「足が椅子に近すぎたり、遠すぎたりしていないか」
「左右の足に体重を乗せられているか」
「滑りやすい靴下やスリッパを履いていないか」
足の位置が安定すると、太ももやお尻の力を使いやすくなります。
特に、椅子が低い場合や柔らかいソファの場合は、足の位置が悪いと立ち上がりにくくなることがあります。
原因2:身体を前に倒せていない
椅子から立ち上がるときは、身体を少し前に倒してから立ち上がります。
前に体重を移すことで、お尻が椅子から離れやすくなります。
反対に、身体が後ろに残ったまま立とうとすると、足にうまく力が入らず、後ろに倒れそうになったり、何度も反動を使ったりすることがあります。
たとえば、次のような様子がある場合は注意が必要です。
「勢いをつけないと立てない」
「背中が丸まりすぎている」
「立とうとしてもお尻が椅子から離れにくい」
「立ち上がるときに後ろへ倒れそうになる」
「手すりを強く引っ張って立っている」
立ち上がりでは、ただ上に立つのではなく、まず少し前に体重を移すことが大切です。

立ち上がるときは、少し前に体重を移すことが大切です。
イラスト:いらすとや
原因3:膝や腰の痛みがある
立ち上がりにくさには、痛みが関係していることもあります。
膝が痛いと、立ち上がるときに足へ体重をかけにくくなります。
腰が痛い場合は、身体を前に倒す動きが怖くなったり、立ったあとに姿勢を伸ばしにくくなったりします。
痛みがあると、無意識に痛い方の足をかばうことがあります。
その結果、左右の体重のかけ方が偏り、ふらつきやすくなることもあります。
次のような場合は、無理に運動を続けないようにしましょう。
「立ち上がるたびに膝が強く痛む」
「腰に鋭い痛みが出る」
「片方の足に体重をかけられない」
「立ったあとに強いふらつきがある」
「痛みが数日続いている」
痛みがある場合は、運動の回数を増やす前に、身体の状態を確認することが大切です。
原因4:椅子や生活環境が合っていない
立ち上がりにくさは、身体だけでなく環境も関係します。
たとえば、椅子が低すぎると立ち上がるときに大きな力が必要になります。
柔らかいソファでは、身体が沈み込みやすく、お尻が持ち上がりにくくなります。
また、足元が滑りやすいと、立ち上がるときに力を入れにくくなります。
ご自宅では、次のような点を確認してみましょう。
「椅子が低すぎないか」
「ソファが柔らかすぎないか」
「足元に滑りやすいマットがないか」
「手すりや机の位置は使いやすいか」
「立ったあとにすぐ歩き出すスペースがあるか」
椅子の高さや足元の環境を少し整えるだけでも、立ち上がりやすくなることがあります。

椅子の高さや手すりの位置など、生活環境も大切な確認ポイントです。
イラスト:いらすとや
ご自宅でできる簡単な練習
ご自宅で行いやすい練習として、椅子からの立ち座り運動があります。
ただし、痛みやふらつきがある場合は無理をしないことが大切です。
安全のため、安定した椅子を使い、必要に応じて机や手すりにつかまって行いましょう。
椅子からの立ち座り練習
まず、椅子に浅めに座ります。
両足を床につけ、足を少し後ろに引きます。
身体を少し前に倒します。
ゆっくり立ち上がります。
立ったら、ふらつきがないか確認します。
ゆっくり椅子に座ります。
最初は、5回程度から始めてみましょう。
慣れてきたら、体調に合わせて回数を調整します。
ポイントは、反動を使いすぎないことです。
勢いで立とうとすると、膝や腰に負担がかかったり、ふらつきにつながったりすることがあります。
注意したいこと
膝や腰に痛みがある場合は無理をしない。
ふらつきがある場合は一人で行わない。
キャスター付きの椅子は使わない。
滑りやすい靴下やスリッパでは行わない。
疲れている日は回数を減らす。
運動は、できる範囲で安全に行うことが大切です。

立ち座り練習は、無理のない範囲で安全に行いましょう。
イラスト:いらすとや
デイサービスでできること
デイサービスでは、立ち上がりにくさに対して、身体の状態や生活動作を確認しながら機能訓練を行います。
たとえば、足の筋力、膝や股関節の動き、腰の痛み、姿勢、バランス、足の位置、椅子の高さ、立ったあとのふらつきなどを確認します。
また、ただ立ち上がる練習を繰り返すだけでなく、その方の生活に合わせて考えることが大切です。
「トイレから立ち上がりやすくしたい」
「食卓の椅子から安全に立ちたい」
「玄関で靴を履いたあとにふらつかないようにしたい」
「外出先でも安心して椅子から立てるようにしたい」
このような生活場面を考えながら、必要な運動や環境の工夫を一緒に確認していきます。
まとめ
椅子から立ち上がりにくい原因は、足の筋力だけではありません。
足の位置、身体の前への動き、膝や腰の痛み、バランス、椅子の高さ、足元の環境など、さまざまな要因が関係します。
立ち上がりは、食事、トイレ、外出など、日常生活に欠かせない動作です。
早めに変化に気づき、身体の状態に合わせて練習することで、生活のしやすさを保つことにつながる可能性があります。
「椅子から立つのが大変になってきた」
「立ったあとにふらつく」
「トイレや食卓の椅子から立つのが不安」
そのようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
運動は身体の状態に合わせて行うことが大切です。痛みや強いふらつきがある場合は、無理をせず専門職にご相談ください。
参考資料
・厚生労働省「ロコモ度テスト」
・厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
・日本理学療法士協会「理学療法ハンドブック シリーズ18 転倒予防」
・日本整形外科学会 ロコモONLINE「ロコトレ」
・国立長寿医療研究センター「フレイルの原因は?」

